研究プロジェクト パブリック・サービス 出版物 著作一覧 プロフィール 赤嶺研究室 | Balat's Office

研究プロジェクト

プロフィールで述べたように、今後10年ぐらいをかけて、「近代という時代を油脂利用の視点から描いてみたい」と考えています。その一環として、これまでやってきたモノ研究を、広義のサプライチェーン研究として捉えなおし、方法論を再検討することを目的として共同研究を組織したところです。将来的には、鶴見良行さんが組織したような、さまざまな背景をもつ人びとと協働できるバナナ研究会やヤシ研究会のような市民研究の場(あぶら研究会)を設け、社会科学を拓いていきたいと考えています。


【研究代表-科学研究費補助金】
2019-23
「重層化する不確実性へのレジリエンス──水産物サプライチェーン研究の課題と実践」(基盤研究A,#19H00555)
2016-18
「『フロンティア社会論』再考──北洋漁業における季節労働者の個人史に着目して」(挑戦的萌芽研究,#16K13121)
2013-2016
「生物資源のエコ・アイコン化と生態資源の観光資源化をめぐるポリティクス」(基盤研究B,#25283008)
2013-2015
「近代産業遺産としての捕鯨の記憶──捕鯨問題と文化多様性」(挑戦的萌芽研究,#25570010)
2011-2012
「生活権としての「在地商業権」──生態資源の循環性と多様性に着目して」(挑戦的萌芽研究,#23651257)
2010-2012
「生態資源管理と文化多様性保全をめぐる当事者間対話の構築──東南アジア多島海を中心に」(基盤研究B,#22310157)
2007-2009
「オープン・アクセスに関する地域間比較──アジア境域世界における資源利用の動態」(基盤研究C,#19510257)
2005-2006
「定着性沿岸資源管理をめぐる政治性と当事者性の地域間比較研究」(萌芽研究,#17651133)
2002-2004
「ナマコ生産・干ナマコ交易におけるエスノネットワーク形成史」(若手研究B,#14710221)
1997-1999
「フィリピン,スル海域におけるサマ社会の研究」(特別研究員奨励費,#97-8702)
【研究代表-そのほか】
2019
「成熟社会における食生生活──ナナのサプライチェーン研究を中心として」(江頭ホスピタリティ事業振興財団・研究開発事業研究助成)
2017a
「コモンズ論再考──キノコ類の採取と万人の権利(everyman's rights)をめぐるマルチサイテット・アプローチを手掛かりにして」(江頭ホスピタリティ事業振興財団・研究開発事業研究助成)
2017b
「オープン・アクセス論再考──キノコ類採取における「万人の権利」の史的発展と現代的課題」(スカンジナビア・ニッポン・ササカワ財団,GA17-JPN-0022)
2016
「地域ブランドとエコラベル認証の相乗効果──水産資源の持続可能な利用と漁業地域の活性化をめざして」(江頭ホスピタリティ事業振興財団・研究開発事業研究助成)
2015
「気仙沼市の地域復興に果たすスローフード運動とフードツーリズムの可能性と課題」(江頭ホスピタリティ事業振興財団・研究開発事業研究助成)
2014a
「隠岐の100人──水産資源を利活用したまちづくりに関する個人史集成②」(江頭ホスピタリティ事業振興財団・その他の事業助成)
2014b
「離島社会が経験した高度経済成長と島嶼社会の持続性──海士町での聞き書き実践の試み(2)」(一般社団法人水産資源・海域環境保全研究会研究助成)
2013b
「現代社会における食生活誌学の意義と可能性──高度経済成長期における食生活の変容に関する基礎資料の収集と作成」(江頭ホスピタリティ事業振興財団・研究開発事業研究助成)
2013c
「離島社会が経験した高度経済成長と島嶼社会の持続性──海士町での聞き書き実践の試み」(一般社団法人水産資源・海域環境保全研究会研究助成)
2012a
「高度経済成長期における食生活の変容に関する口述史──食生活誌学の視点から」(江頭ホスピタリティ事業振興財団・研究開発事業研究助成)
2012b
「板鰓類魚類の利用と管理の多元性──フィリピンのジンベエザメとオニイトマキエイを中心として」(一般社団法人水産資源・海域環境保全研究会研究助成)
2011
「水産物供養の現代的機能──消費者参加による水産資源保全運動の展開をめざして」(一般社団法人水産資源・海域環境保全研究会研究助成)
2010
「CITESにおけるサメ類とリーフ・フィッシュをめぐるエコ・ポリティクス」(一般社団法人水産資源・海域環境保全研究会研究助成)
2009-2010
地域主導型エコ・ツーリズムの開発──生物多様性保全と文化多様性保全の両立をめざして」(名古屋市立大学特別研究奨励費)
2007
「バナナ学の構築──環境/開発問題の解決にむけた地域研究的対応」(名古屋市立大学特別研究奨励費)
2005
「多面的湿地保全の展開──湿地文化複合と生態資源の保全へむけて」(名古屋市立大学特別研究奨励費)
2003
「言語資料と口承史料による地域史の再構築」(名古屋市立大学特別研究奨励費)
【受託研究】
2011
「社会的企業人材創出・インターンシップ事業」(内閣府・地域社会雇用創造事 業実施要領)
2010-2011
「乾貝柱の生産から流通に係わる歴史の取り纏め」(オホーツク乾貝柱宣伝協議会)
2007-2009
「乾燥ナマコの計画的生産技術の開発」(農林水産技術会議・先端技術を活用した農林水産研究高度化事業・輸出促進・食品産業海外展開型#1915,代表 町口裕二・独 立行政法人水産総合研究センター)
【共同研究-科学研究費補助金】
2017-2020
基盤研究A
(#17H00931)
「渡海者のアイデンティティと領域国家──21世紀海域学の史学的展開」(代表 上田信・立教大学文学部)
2016-2019
基盤研究A
(#16H02715)
「アジア海域からユーラシア内陸部にかけての生態資源の攪乱と保全をめぐる地域動態比較」(代表 山田勇・京都大学東南アジア地域研究研究所)
2016-2019
基盤研究B
(#16H03309)
「地域生態資源の海外研究者との協働研究」(代表 山田勇・京都大学東南アジア地域研究研究所)
2015-2018
基盤研究A
(#15H02617)
「グローバル化時代の捕鯨文化に関する人類学的研究」(代表 岸上伸啓・国立民族学博物館)
2012-2015
基盤研究A
(#24243054)
「多元的な価値の中の環境ガバナンス──自然資源管理と再生可能エネルギーを焦点に」(代表 宮内泰介・北海道大学大学院文学研究科)
2012-2014
a 挑戦的萌芽研究
(#24653110)
「まちづくりに資する参加型質的調査手法の開発」(代表 宮内泰介・北海道大学大学院文学研究科)
b 基盤研究B
(#24310182)
「地域社会はいかにして国際的な環境制度の成功に貢献できるのか」(代表 Wil de Jong 京都大学地域研究統合情報センター)
2012-2013
挑戦的萌芽研究
(#24651278)
「地域情報学の手法を用いた海域東南アジアにおける境域社会の動態の解明」(代表 長津一史・東洋大学社会学部)
2011-2014
基盤研究A
(#23251004)
「ユーラシア大陸辺境域とアジア海域の生態資源をめぐるエコポリティクスの地域間比較」(代表 山田勇・京都大学東南アジア研究所)
2009-2011
a 基盤研究C
(#21510271)
「海域東南アジアにおけるグローバル・アクターと周縁社会──開発過程の国家間比較」(代表 長津一史・東洋大学社会学部)
b 基盤研究B
(#21401039)
「トランスナショナル・コミュニティの地域間比較──境域アジアの移住と生活の動態研究」(代表 松本誠一・東洋大学社会学部)
c 基盤研究B
(#21405026)
「東アジア水産業の競争構造と分業のダイナミズムに関する研究」(代表 山尾正博・広島大学大学院生物資源研究科)
d 基盤研究B
(#21310159)
"Transnational natural resource governance in borderlands" (代表 Wil de Jong 京都大学地域研究統合情報センター)
2008-2011
基盤研究A1
(#20243028)
「アダプティブ・ガバナンスと市民調査に関する環境社会学的研究」(代表 宮内泰介・北海道大学大学院文学研究科)
2007-2010
基盤研究A1
(#19251004)
「アジアにおける希少生態資源の撹乱動態と伝統的技術保全へのエコポリティクス」(代表 山田勇・京都大学東南アジア研究所)
2007-2008
萌芽研究
(#19658084)
「東アジア消費市場圏における周辺貿易のダイナミズム」(代表 山尾政博・広島大学大学院生物圏科学研究科)
2006
基盤研究C
(#18638003)
「アジア海域社会の復興と地域環境資源の持続的・多元的利用戦略」(代表 山尾政博・広島大学大学院生物圏科学研究科)
2005
基盤研究C
(#17638005)
「東アジア巨大水産物市場圏の成立と「責任ある漁業」」(代表 山尾政博・広島大学大学院生物圏科学研究科)
2005-2007
基盤研究B1
(#17330107)
「半栽培(半自然)と社会的しくみについての環境社会学的研究」(代表 宮内泰介・北海道大学大学院文学研究科)
a.基盤研究A2
(#16252003)
「インドネシア地方分権化に伴う資源管理・社会経済の変容──スラウェシ島を事例に」(代表 田中耕司・京都大学東南アジア研究センター)
b.基盤研究A1
(#16251007)
「東南アジアにおける中国系住民の土着化・クレオール化についての人類学的研究」(代表 三尾裕子・東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
c.基盤研究B1
(#16405028)
「漁村社会の多面的機能とEcosystem Based Co-management」(代表 山尾政博・広島大学大学院生物圏科学研究科)
2003-2006
基盤研究A1
(#15251012)
「先住民による海洋資源の流通と管理」(代表 岸上伸啓・国立民族学博物館)
2003-2004
基盤研究B1
(#15330094)
「コモンズと公共性の環境社会学的研究」(代表 宮内泰介・北海道大学大学院文学研究科)
2002-2006
特定領域研究
( #14083208)
資源の分配と共有に関する人類学的統合領域の構築」(代表 内堀基光)特定領域研究(2)「資源と生態史──空間領域の占有」(代表 秋道智彌・総合地球環境学研究所,
2002-2004
基盤研究A1
(#14251008)
「船を使った海域研究の拠点づくりとウォーレシア海域の生物資源利用・管理の動態」(代表 遅沢克也・愛媛大学農学部)
2001-2004
基盤研究A1
(#13371004)
「ボルネオ及びその周辺部における移民・出稼ぎに関する文化人類学的研究」(代表 宮崎恒二・東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
2001-2003
基盤研究A2
(#13371007)
「ウォーラセア海域における生活世界と境界管理の動態的研究」(代表 アビナレス, パトリシオ N.京都大学東南アジア研究センター)
2000-2002
a. 基盤研究B2
(#11490018)
「フロンティア社会の地域間比較研究」(代表 田中耕司・京都大学東南アジア研究センター)
b. 特定領域研究A1
(#11171101)
「環太平洋の「消滅に瀕した言語」にかんする緊急調査研究」A03 東・東南アジア班(#12039221)「フィリピン・東インドネシア地域の消滅の危機に瀕した言語の現地調査と記述文法作成」(代表 北野浩章・愛知教育大学)
1999-2001
基盤研究A2
(#11691053)
「先住民による海洋資源利用と管理」(代表 岸上伸啓・国立民族学博物館)
1997-1999
創成的基礎研究
(#09NP1301)
「現代イスラーム世界の動態的研究」(代表 佐藤次高・東京大学大学院文学研究科)
1995-1997
国際学術研究
(#07041057)
「ウォーラセア海域世界のネットワーク型社会の文化生態的動態」(代表 田中耕司・京都大学東南アジア研究センター)
【共同研究-そのほか】
1998-1999
トヨタ財団研究助成(98-B1-102)「カツオ・かつお節の生産-流通-消費をめぐる日本とアジア・太平洋──過去から現在へ」(代表 宮内泰介)
1990-1992
トヨタ財団研究助成(90-II-122, 91-III-020)「ヤシ科植物の多様な生産物に見る日本とアジア・太平洋──その生産・流通・消費から」(代表 鶴見良行)


「重層化する不確実性へのレジリエンス----水産物サプライチェーン研究の課題と実践」
(基盤研究A,#19H00555)


概要:経済活動が爆発的に拡大した1950年代以降の現代社会は、大加速時代(Great Acceleration)と称されています(日本の文脈でいえば、高度経済成長以降の時期が相当します)。本研究は、現代を象徴する大量生産・大量消費の生活様式が、気候変動や海洋環境をはじめとする種々の不確実性を高めてきたとの認識にたち、そうした不確実性への適応力/回復力̶̶ レジリエンス̶̶ の高い水産業へ転換していくための社会的課題と対応策をあきらかにすることを目的としています。具体的には、マグロやサケ・マスなど日常的に消費される魚類の遺伝資源から養殖飼料用の魚粉までを対象として、①生産から流通、消費をつなぐサプライチェーンの成立過程と、②サプライチェーンに生起する重層化した不確実性の因果関係群の相互関係を分析したうえで、③各種の認証制度をふくむ、不確実性に適応しうる対応策をあきらかにしたいと考えています。個別魚種のサプライチェーンが、わたしたちの食システムの構成要素である以上、各事例に共通する要因群の分析を通じて水産業全体のレジリエンスを向上させていくことが重要なのであり、本研究はそのための共同研究を目指しています。

本研究の背景:人類学者のAnna Tsing(カリフォルニア大学教授)は、著書『マツタケ』(みすず書房、2019年)において、①人工栽培が不可能で豊凶を自然に依存せざるをえないマツタケのサプライチェーンに介在する種々の不確実性が、さまざまな偶発性によって緩和される動態を描くとともに、②自然資源の安定供給を前提とした20世紀的資本主義の限界を指摘し、③そうした右肩あがりの経済成長を所与とした人文社会科学にかわり、不確実かつ不安定な状態にある現代社会に即した人文社会科学を再構築することの必要性を説いています。

偶発性と不確実性を包摂しようとするTsingの姿勢は、さまざまな研究分野で注目されている環境変化や災害などへのレジリエンス(適応力/回復力)との共通点を想起させるものです。規模と効率を重要視する市場経済が、水産資源の乱獲をまねいたことは否定できません。しかし、水産業が直面する問題は乱獲だけではありません。たとえば、海水温度は10数年周期で上下することが知られており、この変動とマイワシが減り、サンマが増えるなどといった水揚げの豊凶が交代する魚種交代̶̶レジーム・シフト̶̶との相関関係があきらかになっています。本研究が着目するのは、資源管理を軸とした漁業関係者の努力だけでは解決しえない、水温変化や海流変化など地球規模の気候変動に起因する不確実性群へのレジリエンス的視座の重要性です。

たしかにTsingは「ピンチはチャンス」的に種々の不確実性をポジティブに克服していく人びとの生計戦略を描くことに成功しました。しかし、そもそも不確実性はリスクをともなうものであり、その実態は、ポジティブ/ネガティブな両面が重層的に絡まりあったものではないでしょうか。本研究は水産物サプライチェーンの重層化した不確実性の動態をあきらかにし、それらを緩和しうる社会的レジリエンスの具体例を提示・統合することによって、Tsingが問いかける、人文社会科学の再構築への応答としたいと考えています。