今日の大学教育、とくに文系の学部・学科では、フィールドワーク(臨地研究)の重要性 (と楽しさ)が理解されているとは、かならずしもいえません。たとえば、新入生を対象 に研究活動の基礎的手法を教授する「基礎演習」といった科目では、旧態依然たる文献学 的手法のオンパレードです。わたしは、文献考証とフィールドワークは相互に補完しあう もの――文献学習だけでも駄目だし、同様にフィールドワークだけでも不十分――と考え ています。このような現状の打開策として、複雑怪奇な現代社会の理解をふかめるために 、フィールドワーク教育の確立と普及をめざし、これまで試行錯誤をくりかえしてきまし た。まだまだ発展途上ではありますが、ゼミ活動を中心に、以下、これまでの経過を報告 いたします。
2001年に名古屋市立大学に赴任して以来、自身の調査でおとずれた山口県の周防大島を皮切りに夏休みを利用して学生と国内でフィールドワークをおこなってきました。金銭的な問題もあり、2002年以降は、3泊4日程度の調査を近場でおこなっています。
今日のわたしの研究手法の中核はフィールドワークにほかなりませんが、なにも「フィールドワーク」という手法を大学教育で学んできたわけではありません。文学部で英語学/言語学を学んだわたしにとって、「フィールドワーク」は、文字通りの試行錯誤を通じ、手探りで自己開発してきた手法です。ですから、わたしのやり方がベストかどうかは自信のほどはありませんし、そもそも、フィールドワークは方法論ですから、研究目的にそって十人十色であっていいと考えています。それでも、この20年ほど磨いてきたフィールドワークの技術は、自分なりにノウハウを抽出しうるはずです。
わたしが調査実習を企画したのは、1)そんなフィールドワークの技術を学生につたえたい、2)学期中の学習はどうしても文献中心にならざるをえないので、短期間であっても「生活の現場」を直視することで、机上の世界と現場とを往還する機会を提供したい、3)調査報告の執筆を通じて、文献検索の方法はもとより、文筆力を向上させたい、という実践性にあります。
2005年度から2008年度までの4年間は、フィリピン研究の先輩である中京大学社会学部(現現代社会学部)の川田牧人ゼミと合同で調査実習をおこない、報告書も合同で発行してきました。この間、川田さんのフィールドワーク観におおくを教えてもらいました。しかし、2007年度のカリキュラムで「国内フィールドワーク」という科目が新設されたことをうけ(2単位)、2009年度からは単独でおこなうことになりました。
夏休みにおこなうという利点を活かし、将来的には全国にちらばる友人たちとフィールドワーク実習を実施していければ、と考えています。立場のことなる学生間の交流がひろがっていけば、教育効果も高まるものでしょう。
もっとも、実習は調査地の方々の理解と協力があって実施可能となります。事実、これまでにも実習地の方々には、さまざまな形でご迷惑をおかけしてまいりました。が、さいわいにも教育の一環として大目にみてくださったこと、感謝しています。今後も、さまざまな地域におじゃますることになろうかと存じますが、ご指導のほど、よろしくお願いします。
今日のわたしの研究手法の中核はフィールドワークにほかなりませんが、なにも「フィールドワーク」という手法を大学教育で学んできたわけではありません。文学部で英語学/言語学を学んだわたしにとって、「フィールドワーク」は、文字通りの試行錯誤を通じ、手探りで自己開発してきた手法です。ですから、わたしのやり方がベストかどうかは自信のほどはありませんし、そもそも、フィールドワークは方法論ですから、研究目的にそって十人十色であっていいと考えています。それでも、この20年ほど磨いてきたフィールドワークの技術は、自分なりにノウハウを抽出しうるはずです。
わたしが調査実習を企画したのは、1)そんなフィールドワークの技術を学生につたえたい、2)学期中の学習はどうしても文献中心にならざるをえないので、短期間であっても「生活の現場」を直視することで、机上の世界と現場とを往還する機会を提供したい、3)調査報告の執筆を通じて、文献検索の方法はもとより、文筆力を向上させたい、という実践性にあります。
2005年度から2008年度までの4年間は、フィリピン研究の先輩である中京大学社会学部(現現代社会学部)の川田牧人ゼミと合同で調査実習をおこない、報告書も合同で発行してきました。この間、川田さんのフィールドワーク観におおくを教えてもらいました。しかし、2007年度のカリキュラムで「国内フィールドワーク」という科目が新設されたことをうけ(2単位)、2009年度からは単独でおこなうことになりました。
夏休みにおこなうという利点を活かし、将来的には全国にちらばる友人たちとフィールドワーク実習を実施していければ、と考えています。立場のことなる学生間の交流がひろがっていけば、教育効果も高まるものでしょう。
もっとも、実習は調査地の方々の理解と協力があって実施可能となります。事実、これまでにも実習地の方々には、さまざまな形でご迷惑をおかけしてまいりました。が、さいわいにも教育の一環として大目にみてくださったこと、感謝しています。今後も、さまざまな地域におじゃますることになろうかと存じますが、ご指導のほど、よろしくお願いします。
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『地域研究年報』は、赤嶺研究室(地域研究ゼミ)の年次報告書で、ゼミ生が卒業 研究の一環としておこなった調査結果を公開する目的で発行しています。年間250部強し か印刷できていませんが、調査協力者はもとより、調査地の方々に読んでもらえるよう、 調査をおこなった自治体の図書館におさめるように努力してまいりました。号によっては 残部がある場合もございます。関心ある方は、お問いあわせください。
2011 |
『地域研究年報』第8号(222頁)
水野奈々子,「出稼ぎの力—ひとりのフィリピン人女性とファミリーを追って」,1-33頁. 田辺聖子,「「時」を写しだす商店街」,35-73頁. 杉浦遥,「桜井凧—過去と未来をつなぐ糸」,75-115頁. 平田恵美,「山に生きる—愛知県北設楽郡豊根村と、そこに息づく花祭り」,117-144頁. 渡邊高志,「サウンドホールから見る世界—ギターの製作から考える地域産業と資源問題」,145-166頁. 久積泉,「生きるために—激動の時代を中国社会で生きぬいた女性の一生」,167-184頁. |
2010 |
2010 『地域研究年報』第7号(114頁)
荒島あおい,「食人魂—西尾市の抹茶・おでんによるひとりひとりのまちづくり」,1-51頁. |
2009 |
『地域研究年報』第6号(147頁)
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2008 |
『地域研究年報』第5号(250頁)
小見山彩子,「実践の物語−わたしの目からみたまちづくり」,1-44頁. 野々田恭子,「地域おこしをまつりで−岐阜県可児市六社神社の大例祭」,45-72頁. 大石洋子,「継承する森林−天竜の一山林保有者として森林の維持を考える」,73-112頁. 小川浩代,「伝承でつながる−伝承、それはコミュニケーション」,113-152頁. 鈴木真由美,「望郷のテニアン−南洋移民2世の個人史」,153-194頁. |
2007 |
『地域研究年報』第4号(260頁)
野田郁子,「生産者におもいをはせる−日本におけるフェアトレードの可能性」,1-60頁. 小島知紗,「新たなる里山−バンブーインスタレーションから考える地域社会のあり方」,61-89頁. 伊藤真弓,「生産地をおもい、変えていく−一宮繊維産業の新たな挑戦」,90-130頁. 石山紘子,「レジ袋から考えるこれからのエコ・ライフ−」,131-169頁. 藤原美沙子,「動物ブームの先に待つものは−人と動物のかかわり方を問う」,170-209頁. |
2006 |
『地域研究年報』第3号(212頁)
鄭信智,「波打際からみる世界−バリ島観光における人口移動の同時代史」,1-69頁. 平山妙子,「木曽川うかいと生きる−日本ラインを中心とした木曽川流域文化の担い手」,71-130頁. 澤入友美,「まちをつくる人たち−模索する市民参加のかたち」,131-159頁. |
2005 |
『地域研究年報』第2号(145頁)
渡辺恵理,「エコロジーな食器産業−持続的な社会の形成にむけて」,1-27頁. 提髪典子,「古着の可能性−リデュースとリユースから考える」,29-59頁. 岡野はじめ,「豊饒なるインド」,61-81頁. |
2004 |
『地域研究年報』創刊号(130頁)
香田祐果,「給食は学校教育か−顔の見える関係を追及した教育とその担い手」,1-51頁. 綿引慎一,「患者の人権−よりよい医療環境の創出をめざして」,53-88頁. |